まともに分析するととてつもなく長くなりそうなので、今までの知識で単純な結論だけ書いたものを暫定的な報告とさせていただきます。
ケース@ The直接対決
カエサル軍団とアレクサンダー軍団、最盛期の兵力・装備で、どっかの平原で大激突!!!
(地形効果はどちらにもない会戦、その場前後2−3日の戦術戦闘を想定します。)
結果は明白すぎます。
90%以上カエサルの勝ち
同じ進化の系統上にある場合、紀元前4世紀の軍隊が300年後、紀元前1世紀の軍隊に勝てるはずはありません。
ローマ人はマニュアルを作るのに非常に優れている民族です。なんでもマニュアル化しています。土木工事のやり方、メシの配給、軍隊の訓練、などなど。
でもって記録魔。なんでも帳簿つけて記録してます。
つまり・・・・・・・・
紀元前4世紀(300年前)の英雄の行動やら軍隊やら、当然研究し尽くされているわけです。
アレクサンダーの偉大さってのはその同時代人からしてすでにわかっていたし、以後の人々ならなおのこと。地中海世界の軍人で知らない者なんていない。紀元前3世紀のローマでもそうだし、その敵カルタゴでも。
カルタゴの名将ハンニバルの用兵も、そのライバル、ローマのスキピオも、ローマのザコ軍団長A・Bも、みーんなアレクサンダーの影響を受けているし、その知識を前提にして戦っています。
騎兵運用とか、歩兵の使い方、各個撃破&包囲攻撃戦術(注)もすべて。
注:要は敵をちっちゃなグループに分けて囲んでぼこぼこにするってこと。
それに、指導層にボンクラが続いたとはいえマケドニアの兵はアレクサンダーの残したままです。なのにマケドニアはカエサルの時代にはローマの足元にも及ばない。つまり、ローマは300年の間にアレクサンダーの軍をしのぐ軍システムは作り上げていたんです。
だから、
もし直接激突なら、カエサルは完全にアレクサンダーの戦力の手の内を見切っています。
初代ガンダムとνガンダム(アムロが乗ってる)が戦うようなもの。同じ系統の旧式新式なので、軍団そのものに雲泥の差があります。
ゲームとかマンガではここで『奇跡の逆転』が起きる。
でもその場合、たいてい帥将の才能が隔絶している。
相手がローマの『ナントカヌス』とかいうザコなら、アレクサンダーも勝てたかもです。
ハンニバルがカンネーでやったみたいに。
でも、相手はカエサル。
ガリアの名将ヴェルチンジェトリクス指揮の35万の制圧下のフランスに数十騎で入り、全土に散らばっていた軍団を(犠牲を出さずに)一ヶ所にまとめて見せた男。
その35万の追撃を受け、退路を断たれる&包囲攻撃&効率的用兵を5万の兵でしのぎ、撃退し、撃破して相手にトラウマまで植え付けた男。
当時の西の最高文明、ローマがついに『紳士が約束を破る』という冒涜行為でしか殺すことができなかった男。
どんな相手に対しても情報をよく収集し、その主力の力を出させずにことごとくつぶした男。
それがカエサルです。
さて、それほどの隙があるか?大いに疑問です。
実際に両者が激突するとどうなるか?
天才の用兵ってのは大体型が決まっているので、恐らく両者共に情報収集には懸命になることでしょう。ここが明暗を分けます。
同レベルなら、戦力の差でカエサルに軍配が上がります。
戦闘の際、騎兵を相手の後ろに回しての包囲攻撃が戦闘の基本ですが、
マケドニア騎兵(アレクサンダー) < ゲルマン・ガリア騎兵(カエサル)。
もしそうでなかった場合、カエサルは恐らく馬潰しを考えます。
これは実例があって、盾を構えた兵隊に槍ぶすまを作らせるというものです。
恐らくアレクサンダーも、同じ工夫を考えつくかもしれない。
ただ、情報収集が同レベルなら、これは無効化されます。
もしうまくいったとして、ここにネックがあります。
それは、兵隊からの信頼。
カエサルは子飼いの兵隊を殺さない将でした。『カエサルの戦士達』と呼ばれたその第10軍団はガリア(フランス)での7年と、内乱での3年(だっけ?)を戦い抜きます。その間の犠牲、およそ2割。ですがカエサルは兵隊の教育にも力を注いでいるから、カエサルに率いられたことのある軍団は大なり中なりカエサルに信服している。
軍団が彼に対してストライキを起こしたことがありますが、それは説得され、逆に士気を奮い立たせる結果になっています。
カエサルの兵は、彼の兵であることに誇りを持っていました。
アレクサンダーの兵はどうか?
確かによくまとまっています。ギリシア・エジプト・ペルシアの連合軍にもかかわらずアレクサンダーはインドまで行きました。インドにまでついていったギリシア兵は200人かそこらだったとか。後は他の地域での兵隊です。それで戦争に何度も勝ってるし、第一インドまできているのは、やはりただのAランクじゃない。
でも・・・
でも、です。
マケドニア進発時の兵力は約5万。
インドに着いたのは200ちょい。たったの0.4%。
あとは?
置き去り(植民)か死亡、なんですね。
それに、アレクサンダーが引き返してきた理由ってものを思い出してください。
これ以上の遠征を兵士がいやがったから、ですよね?
そういうことです。
兵士に対して指揮官の意図が十全に行き渡るか、兵士が指揮官の手足になるか、ってポイントで、どっちもAクラスの合格点だけど統御率98%と85%は大きな差になります。特に『猛然と突撃してくる騎兵の足を止める』とかいう、ある意味『男試し』的な場合には。
・・・・・・カエサルをひいきしてばっかり。
でもカエサル、隙がないです。いやマジで。
興味があったら塩野七海の『ローマ人の物語』で『ファルサルス会戦』の経過を追ってみてください。
カエサルがローマでの最大のライバル、ポンペイウスを撃破した戦いです。
ポンペイウスは当代一流の軍人だったし、ローマの精鋭同士の激突、って点でこの戦いは意味があります。
つまり、基礎知識同じ。装備とかマニュアルの質も大体同じ。
ポンペイウスはアレクサンダーよりは大分器量が劣りますが、300年分のノウハウは叩き込んでいます。
しかも、決定力となる騎兵はポンペイウス側の方が圧倒的に多い。
ポンペイウスが珍しく(爆)冴えていたにもかかわらず、この戦いに大勝したのはカエサルです。
閑話休題。
アレクサンダー対カエサル、そのままならば騎兵の運用合戦になる。
歩兵はその間に中央を突破されずに守りきれるか?
ここからがうろ覚えなのですが、アレクサンダーは確か自分がある程度陣頭に出て戦うタイプ(絵があったはず)。
カエサルはといえば、決定的な局面まで『全体が見えるところ、そして全体から見えるところ』にいるタイプ。
アレクサンダー軍の方が最初の突撃エネルギーはあると思います。
それを装備の差(射程と防御力の差)と兵の練度、信頼感が削っていく。
時間がたてば騎兵がより展開しやすいカエサルの方が断然有利になってきます。
恐らく、ディフェンスラインの増強もやるだろうし。
後は手の早さですね。
戦場の状況変化への対応速度。
兵の質の差でカエサルが有利なので、アレクサンダーはその分手数が必要。
並みのAランク相手ならともかく、カエサルがそこまでの差を許すかどうか。
なんせ6倍の大軍による6方向同時攻撃も耐え切った人間です。
僕は、アレクサンダーの負けとみます。
ではなぜ90%なのか?
残りの10%は、アレクサンダーがもしターゲットを『カエサル個人に絞ったら?』って場合です。
軍隊ってみんなそうですが、カエサル軍は特にカエサルの命令を受けてはじめて十全に機能する組織です。
カエサルは全軍の象徴ですらある。それを『指揮官』ではなく一個人としてつぶすわけです。
カエサルは全軍からよく見える赤いマントをつけています。仰ぎ見る兵士達の絶対の安心の源泉。
つまり狙いやすい、ってことでもある。
カエサル個人への狙撃、あるいは暗殺ができたら?
暗殺・・・・・各人が『持ち場』というものを明確に認識し、指揮系統が確立されているので不審者のカエサルへの接近は難しい。
でも、もし軍団の外から狙撃ができたら?
『狙撃者』の情報が漏れなければ、恐らくは可能でしょう。
ただ、アレクサンダーは非常にプライドの高い人間です。
自らを太陽神の化身と見なしていたし、敵の王族を礼を持って遇している。だから占いも重んじた。
そんな人間が狙撃命令なんてできるか?
答えは恐らくNO。だって神だもん。
開戦前なら間違いなくNO。彼は会戦での勝利を疑っていません。
それでもまだ、カエサル個人への道は残されています。
つまり、カエサルのいる場所への集中的な突撃。
『兵馬を戦わせることが英雄の対決』ってはた迷惑な男の美学を振り切れたら、あるいは可能です。
ただし・・・・・・・
騎兵の突撃でも、防いでいる間に逃げる方がはるかに速い。カエサルが逃げたときに最高レベルで対応できる人物、つまりアレクサンダー大王自身がこの突撃の陣頭に立つ必要があります。突破力は絶大なはず。
このときカエサルはどうするか?
恐らく同じことを考えます。『頭を押さえれば勝ち』。つまり、アレクサンダーの捕獲ないし殺害。
微妙なとこですね。アレクサンダーの突撃速度に全てがかかっています。
戦闘の最初の瞬間からこの攻撃を意識して戦力を集中していない限り、恐らくは手遅れになります。
つまり、結論は
『アレクサンダーがカエサルのこれまでの戦闘を分析し“カエサル軍とはつまりカエサルである”ことを見切り、カエサル個人に攻撃を集中した』場合においてのみ、アレクサンダーに勝ち目があります。
あとはカエサルの勝ちです。
以上。
約3500字。うちの大学のレポートでならAはくるってレベルで書いてみましたが
・・・っと、参考文献が書いてないや!!!
続きは次回♪
天翼騎士団